オメガ博士による最新論文紹介
EPAは「飲んだ量」より「体内で増えた量」が重要?
―大腸ポリープの再発と血中EPA濃度の関係―

同じ食品やサプリメントを同じ量だけ摂っても、体内に取り込まれる量は人によって異なります。吸収や代謝、普段の食生活、きちんと摂取を続けられたかどうかなどが影響するためです。
今回ご紹介するのは、オメガ3脂肪酸の一つEPAと大腸ポリープの再発との関係を調べた研究です。特徴は、「EPAを飲んだか」だけでなく、実際に赤血球中のEPAがどの程度増えたかに注目した点です。
2025年に The Journal of Nutrition に掲載されたこの研究は、seAFOod Polyp Prevention Trialのデータを再解析したものです。もとの試験では、大腸ポリープを複数切除した人を対象に、EPAとアスピリンによる再発予防効果が二重盲検プラセボ対照試験で検討されました。
大腸ポリープは、大腸の内側にできる病変で、一部は長い時間をかけて大腸がんへ進む可能性があります。もとの試験でEPA群とプラセボ群を単純に比較したところ、少なくとも一つの大腸腺腫が見つかった人の割合に、EPAによる明確な低下は認められませんでした。
そこで今回の二次解析では、食事やカプセルからのEPA摂取量に加え、赤血球中のEPA濃度が実際にどの程度変化したかを調べました。赤血球の脂肪酸組成は、ある程度の期間にわたる脂肪酸の摂取・取り込み状況を反映する指標です。
その結果、赤血球中のEPAの割合が0.5ポイントを超えて増加した人では、増加が小さかった人に比べて、大腸ポリープが一つ以上見つかる割合が低い傾向を示しました(オッズ比0.63、95%信頼区間0.40~1.01)。一人当たりのポリープ数も少ない傾向でした(発生率比0.74、95%信頼区間0.54~1.02)。
ただし、いずれも統計学的に明確な有意差にはわずかに届いていません。また、今回は終了した臨床試験の二次解析であり、EPAが増えた人には服用状況など別の要因が影響した可能性もあります。そのため、「EPAを増やせば大腸ポリープを予防できる」と結論づけることはできず、今後の検証が必要です。
この研究の興味深い点は、「どれだけEPAを摂ったか」だけでなく、「体内でどれだけ増えたか」という視点から結果を見直したことです。同じ量を摂取しても、吸収や代謝などによって体内濃度や反応には個人差があります。
一方、今回の結果はEPAによる大腸ポリープや大腸がんの予防を証明したものではなく、内視鏡検査の代わりになるものでもありません。それでも、栄養の働きを評価するときには、摂取量だけでなく体内への取り込み方にも目を向ける必要があることを示した、興味深い研究といえるでしょう。
Sun G, Fuller H, Fenton H, et al. The relationship between dietary and supplemental omega-3 highly unsaturated fatty acid intake, blood and tissue omega-3 highly unsaturated fatty acid concentrations, and colorectal polyp recurrence: a secondary analysis of the seAFOod Polyp Prevention Trial. J Nutr. 2025;155(2):549-558.
2026年8月24日
(立松憲次郎:岐阜薬科大学)


