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オメガ博士による最新論文紹介

気候変動と魚由来オメガ3脂肪酸供給の将来

オメガ博士

魚介類は、ヒトの健康に重要な長鎖オメガ3脂肪酸(EPA・DHA)の主要な供給源であり、心血管疾患の予防や代謝改善などの観点から世界的に摂取が推奨されています。しかし、この重要な栄養素の供給が、気候変動の進行によってどのような影響を受けるのかについては、これまで十分に評価されてきていません。

そこで、世界の漁業および養殖業のデータと気候モデルを統合し、魚介類を通じたオメガ3脂肪酸供給の長期的な変化を初めて体系的に検討した論文を紹介します。

気候変動は水産物由来の栄養素格差を悪化させる

本研究は、世界の漁業および養殖業のデータと気候モデルを統合し、魚介類を通じたオメガ3脂肪酸供給の長期的な変化を初めて体系的に検討したものである。その結果、気候変動を考慮した分析によると、魚介類から得られるオメガ3脂肪酸の供給量は、今世紀中に減少することが予測された。特に温暖化対策が十分に行われない場合、2100年までに約22~31%の減少が見込まれており、将来的な栄養リスクとして無視できない規模である。

この減少の主な要因は、オメガ3脂肪酸を豊富に含む魚種の生産量の低下にある。とりわけ、底魚や中層性の大型魚類はオメガ3脂肪酸含量が高いが、これらの種は気候変動の影響を受けやすく、養殖においても生産ポテンシャルの低下が予測されている。その結果、全体としてのオメガ3供給量が押し下げられると考えられている。

さらに、海洋漁業由来のオメガ3脂肪酸供給に関しては、熱帯地域での減少が顕著である。太平洋の熱帯海域などでは、栄養供給の減少幅が30%を超える地域が多く、一部では2050年時点で60%を超える減少が見込まれている。これらの減少は、生物量の低下や、種の分布が極方向へ移動することに伴う変化、さらには一部地域での局所的絶滅によって引き起こされると考えられている。

一方、世界全体では、産業革命前と比べて気温が1℃上昇するごとに、水産物由来の栄養供給はおよそ3~6%減少すると推定されている。図は、この関係を示したもので、世界全体の平均変化では、温暖化1℃あたりの減少率は、オメガ3脂肪酸で約4.5%と推定された。とくに低所得国では、この減少率が世界平均よりも大きくなることが示されており、気候変動が健康格差を拡大させる要因となり得ることが示唆される。

地球温暖化の進行と海産物由来オメガ3 の供給量の変化との関係

Climate change exacerbates nutrient disparities from seafood.
(Cheung WWL, et al. Nat Clim Chang. 2023;13(11):1242-1249. doi: 10.1038/s41558-023-01822-1.)

オメガ博士

研究の結果から、魚介類は将来にわたって重要なオメガ3供給源であり続けるものの、その安定性は気候変動の影響を強く受けることが明らかとなりました。とりわけ、養殖の拡大のみではオメガ3供給の減少を補えない可能性があることから、漁業資源管理、飼料開発、さらには国際的な食料政策を含めた包括的な対策が求められています。温暖化の抑制そのものが、オメガ3脂肪酸をはじめとした重要栄養素の確保に直結する課題であるといえましょう。

2026年7月10日
(日本栄養大学:川端 輝江)

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