オメガ博士による最新論文紹介
処方薬としてのオメガ3脂肪酸、心臓を守る確かな力

魚に多く含まれる「オメガ3脂肪酸」は、昔から「体に良い脂」として知られています。とくに、青魚の脂に含まれる EPA(エイコサペンタエン酸) や DHA(ドコサヘキサエン酸) は、中性脂肪濃度を低下させ、血小板活性を抑制し、血管機能を改善し、心拍数と血圧を低下させることが多くの研究で示されています。
近年、「サプリメントとしての魚油」と「医薬品としての魚油(オメガ3処方薬)」の違いに注目が集まっています。サプリメントは食品として扱われるため、成分の量や純度にばらつきがあります。一方、処方薬は厳しい基準のもとで製造され、成分の純度や含有量が一定に保たれています。では、実際に“薬としてのオメガ3”にはどれほどの効果があるのでしょうか。
この疑問に明確な答えを示したのが、2024年に中国・北京大学の研究グループが発表した最新のメタ解析です。研究チームは、世界各国で行われた12件の臨床試験、合計およそ10万人分のデータをまとめ、オメガ3脂肪酸の処方薬が心臓や血管の病気をどの程度予防できるかを詳しく検証しました。
オメガ3脂肪酸処方薬が心血管疾患予防に及ぼす効果:無作為化比較試験のメタアナリシス
研究チームは、世界中の医学データベースを調べ、オメガ3脂肪酸の処方薬を使った信頼性の高い臨床試験(RCT)だけを選び出しました。対象となったのは、少なくとも1年以上オメガ3処方薬を服用し、心臓病や脳卒中などの発症を追跡した12件の研究です。
合計で約10万人のデータを分析し、服用していない人(プラセボやスタチン投与など)と比べて、心臓病関連の発症率に差があるかどうかを調べました。
結果として、オメガ3の処方薬を服用していた人では、心臓や血管の病気(心筋梗塞や狭心症など)になる確率が約12%、心臓が原因の死亡が約9%、心筋梗塞が約16%、血管の再手術(再血行再建)が約9%、それぞれ減少したといった効果がみられました。一方で、「脳卒中」や「全体の死亡率」には明確な差は認められませんでした。
The effect of omega-3 polyunsaturated fatty acid prescription preparations on the prevention of clinical cardiovascular disease: a meta-analysis of RCTs.
(Dong S, Wang Y, Bian J, et al. Nutrition Journal. 2024; 23:157. DOI: 10.1186/s12937-024-01051-y)

この研究により、「オメガ3を医薬品として適切に摂取した場合には、心臓病や心臓死のリスクを確実に下げられる可能性がある」ことが示されました。オメガ3脂肪酸の医薬品が心臓病の予防に役立つという強い証拠を示したものと考えています。
2025年12月2日
(川端 輝江:女子栄養大学)

