日本脂質栄養学会

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HOME市民の皆さまへEPA・DHAサプリの男女差

オメガ博士による最新論文紹介

筋肉でのEPA・DHAサプリの反応は男女で違う?若年成人での検討

オメガ博士

オメガ3多価不飽和脂肪酸であるEPAやDHAは、筋肉の炎症をやわらげ、運動後の回復や筋機能の維持を助けるなど「筋肉の健康に役立つ」ことが報告されています。これまで、「高齢者への効果」「運動による筋損傷への効果」「オメガ3で筋活!」で紹介してきました。

一方で、すべての研究で一貫した結果がみられているわけではなく、同じ量のEPAやDHAを摂っても年齢や性別、摂取量などにより反応が異なることが言われています。こうした違いを探る研究の多くは血液や代謝指標を中心に行われてきており、筋肉自体の反応を比較したものは多くはありません。

今回ご紹介するのは、男女別にEPA及びDHA摂取により、血液だけではなく筋肉自体の脂肪酸組成がどのように変化するのか、また摂取を止めた後どのくらい長くとどまるのかをみた研究です。

男女別にみたオメガ3系脂肪酸の摂取、及び摂取中止後の、骨格筋リン脂質組成に及ぼす影響

男性14名と女性15名に、1日当たり5gのEPA+DHA(EPA3.75g、DHA1.25g)のサプリメントを8週間摂取してもらい、さらに、摂取を止めた後14週間の経過をみました。血液検査と骨格筋(大腿の外側の筋肉)の一部を0・6・8・16・20・22週に採取しました。

図に示したとおり、骨格筋EPAにおいて、女性はサプリメント摂取により6週の時点で男性と比較して有意に高くなりました。その後の14 週間のサプリメント中止期間(22週目)は低下していきましたが、男女差はみられませんでした。サプリメント摂取・中止後の一連の経時変化は、男女で有意に異なりました。一方、血漿EPAは、サプリメント摂取により高くなり、中止後低くなりましたが、男女差はみられませんでした。

骨格筋DHAや血漿DHAでは、サプリメント摂取及び中止の経時変化は男女で血漿EPAと概ね同様であり、男女差はみられませんでした。

EPA+DHA サプリメント摂取及び中止期間の骨格筋・血漿EPA 組成の変化

EPA+DHA摂取中に女性が男性よりも高い骨格筋EPA組成を示す正確な理由は分かっていません。体重を考慮しても同様の結果であり、体格が違うことが理由ではなさそうです。習慣的な食事摂取量や体組成、ホルモン、脂肪酸代謝調節関連遺伝子の遺伝型などが複合的に関与していると推測しています。

The influence of biological sex on skeletal muscle phospholipid membrane composition in response to omega n-3 polyunsaturated fatty acid supplementation and washout in humans
(Pufahl J. Callum, Smart E Sydney, Bureau Justin, et al. Prostaglandins Leukotrienes Essential Fatty Acids, 206, 102696, 2025)

オメガ博士

この研究は、男女別にEPA+DHAサプリメント摂取の影響について、骨格筋そのものの脂肪酸を測定し評価した興味深いものです。男女ともにEPAやDHA摂取により骨格筋・血中EPAやDHAは上昇しましたが、女性においてEPAの筋肉への取り込みが顕著にみられました。

女性では、エストロゲンや脂肪酸代謝酵素の影響で男性より体内のEPAやDHAが高くなると言われています。特に今回の結果は、若年女性を対象としていたため男女差が出たのかもしれません。いずれにしても男性においては、食事やサプリメントなどどのような形のものでもEPAやDHA摂取をより心掛けることが大切と言えそうです。

2025年11月21日
(堀口さやか:埼玉医科大学病院栄養部)

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