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脂質栄養学のすすめ 3

すべての世代に大切な脂質栄養学の実践

女子栄養大学・鈴木 平光(日本脂質栄養学会理事長、2011年〜2013年)

鈴木平光

平成23年1月1日から3年間、日本脂質栄養学会理事長を仰せつかりました女子栄養大学の鈴木平光です。

脂質の栄養は、すべての人々の健康の維持・増進を考える上で最も大切なことです。

わが国は、すでに生産年齢(15〜65歳)の方は減少傾向にあり、老年(65歳以上)の方が増加する傾向にあります。そして、50年後には総人口が8000万人台となり、老年の方がその40%以上を占めるようになると推測されています。さらに、100年後には総人口が4000万人台まで減少し、75歳以上の高齢者の占める割合が増加するとされています。

このような社会の変化を想定いたしますと、本学会員が今までの20年間行ってきました研究成果から、魚の油に特徴的で健康の維持・増進に役立つドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)をもっと摂取する必要があると考えられます。特に、妊婦さん、授乳婦さん、乳幼児の子供さん、学童、青年、中高年、老人といったすべての世代の方々に有用であることから、DHA・EPAは50年後、100年後も大切な栄養素として位置付けられると思われます。

最近、本学会では、専門委員会を設け、将来を見つめて、重点的に検討しなければならない課題を取り上げています。その第一は、コレステロール指針委員会の活動です。この委員会では、初代および前理事長が中心となって、活発に活動しています。コレステロールにつきましては、日本動脈硬化学会が治療を前提として、その血液中の基準を定めています。しかし、「コレステロールが悪者で、これを低減すれば本当に健康で長生きできる」(仮説)のでしょうか。最新の科学的データからすると、いまや、この仮説が崩れつつあります。このことの詳細は本ホームページにも掲載されていますので、ご参照ください。第二に、アラキドン酸委員会があります。これは、アラキドン酸を強化する商品による健康被害が生じないかどうかを検討する委員会です。アラキドン酸の強化により、認知症の予防・改善などが期待できるかもしれませんが、その反面、体の中でアラキドン酸から出来るホルモン様物質により、心血管系疾患のリスクが高まったり、炎症症状を悪化させたりすることなどが懸念されています。この点について、科学的根拠に基づいて結論付けることが求められています。さらに、第三に、少なくなるわが国の子供の発達にとって、DHAなどがどのように効果を表し、どのくらい、どのようにして摂取したら良いかを検討する委員会も立ち上げようとしています。

本学会は、前理事長も述べておりますように、内科、外科、小児科等の医師、栄養学者、栄養士、薬学、農学、水産学および工学等の研究者、民間企業の研究者や営業部員など、幅広い分野の方々が結集しています。このことが、脂質の栄養を多面的に科学的にとらえることにつながっています。まさにこれが本学会の最大の特徴なのです。この機会に、脂質栄養学の重要性を御理解いただき、賛助・協賛会員および一般・学生会員として、本学会にご参集いただき、100年先の日本人の健康を脂質栄養の面からとらえて行きましょう。なお、現在、本学会の会誌では脂質栄養食品の広告を取り扱っておりますが、今後は、本ホームページ上でも取り扱う予定にしておりますので、ご利用のほど、お願い申し上げます。
(2011年1月)