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脂質栄養学のすすめ 4

和食文化の国から世界に先駆けた新しい脂質栄養学を!

お茶の水女子大学・小林 哲幸(日本脂質栄養学会理事長、2014年〜)

小林哲幸

日本脂質栄養学会は、時代に即応した脂質栄養指針を確立し、それに基づいた脂質性食品供給方法の開発を図り、もって健康の維持増進に寄与することを目的としています。ここ30年程で、脂質栄養学の研究は大きな変化を遂げ、従来の動物性と植物性の油脂に基づく考え方から、必須脂肪酸であるω6系列脂肪酸とω3系列脂肪酸の生理作用を重視した研究に変換しました。本学会では、魚油やエゴマ油に代表されるω3系列脂肪酸の心疾患予防、乳児栄養、抗炎症・アレルギー作用、及び精神疾患との関係等の研究を推進するとともに、リノール酸等のω6系列脂肪酸の過剰摂取の問題についても2006年に学会提言を行う等、社会へ向けて脂質栄養学改革を積極的に情報発信してきました。その成果は、オメガ3、α-リノレン酸、エゴマ油、EPA、DHAや魚油等の言葉が一般消費者に浸透するとともに、日常の食生活や市場の食品開発にも反映されています。

一方、脂質代謝と健康との関わりでは、血清コレステロール値が重要視された医療が世界的に行われ、わが国も例外ではありません。日本脂質栄養学会では、コレステロールガイドライン策定委員会(現在のコレステロール委員会)を設置し、国内外から各種の最新研究データを集積して議論を重ねてきました。種々のデータに基づいて論じた結果は、「日本のコレステロール基準値(正常値)が低く設定され過ぎている」というものであり、学会監修で「長寿のためのコレステロールガイドライン(2010年版)」、および「続:長寿のためのコレステロールガイドライン(2014年版)−作用メカニズムから見たコレステロール低下医療の危険性」としてまとめられて、公表・出版されています。

その他にも、精神栄養学、小児栄養学、魚食、油脂安全性および栄養表示問題など、本学会が取り扱う研究分野は多岐にわたります。3年ほど前に、我が国が世界に誇る健康食である「和食」文化がユネスコ無形文化遺産に登録されましたが、和食には健康的な脂質栄養のヒントが潜んでいます。世界に先んじて少子高齢化が進み、医療費増大問題などを抱える日本にとっても予防医学に関連深い脂質栄養学は極めて重要であり、世界をリードする研究と実践が行われることが期待されます。本学会はその専門学会として、医師、栄養学者、栄養士、薬学・農学・水産学・工学の研究者、企業関係者等が集って多面的な情報交換を可能にします。学会が会員の皆様に提供できることとしては、まず年1回の大会を開催して脂質栄養学の最新トピックスについて情報交換を行う場を提供します。さらに、年2回の学会誌「脂質栄養学」の発行と学会ホームページを通して各種情報交換を促進します。また、優れた業績に対しては学会賞(ランズ賞)や太田油脂奨励研究賞が授与されます。賛助協賛会員の皆様には、大会の無料参加証や無料展示ブース、学会HPとのリンクなどを提供します。今後も会員の声を反映した新しい企画を実践しながら本学会の発展を図りたいと思っています。ぜひ、この機会に会員となってこれらの重要な課題について一緒に考え、健康イノベーションに資する脂質栄養の変革にご参画下さい。若手の方のご入会も歓迎致します。(2017年1月)