日本脂質栄養学会

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オメガ博士による最新論文紹介

メタボリックシンドロームを予防するための食事とは?

オメガ博士

メタボリックシンドローム(MetS)とは、内臓脂肪の蓄積に、高血圧や高血糖、脂質代謝異常が加わることで、心筋梗塞や脳卒中などになりやすい状態であり、糖尿病や高血圧の発症と強く関連していることが示されています。また、MetSには慢性炎症が深くかかわっています。内臓脂肪が蓄積すると慢性炎症**が引き起こされ、さらに、慢性炎症はMetSのリスク因子である高血圧や高血糖、脂質代謝異常を悪化させることにもなります。

MetSの発症には、ふだん私たちが食べている食事が大きく関係します。そこで、米国の国民健康・栄養調査のデータを用いて、中高年者における食事性炎症指数(DIIスコア)とMetSとの関連を検討した論文を紹介します。

DIIスコア1)とは食事の質を評価するもので、体内の炎症反応にどの程度関与する食事であるかを示す指標です。

米国の中高年における食事性炎症指数とメタボリックシンドロームの関係

研究では、米国の国民健康・栄養調査のデータを用いて、45歳以上の中高年者におけるDIIスコアとMetSとの関連を検討しました。性、年齢、人種、教育歴等の交絡因子を調整した結果、DIIスコアが高い人(炎症促進食)は、低い人(炎症抑制食)に比べて、MetS発症リスクが高く、HDL-C値が低く、空腹時グルコース値が高いことが示されました。また、炎症促進食を食べている女性はMetSおよび空腹時グルコース値が高く、炎症抑制食を食べている男性はHDL-Cが高いことが明らかになりました。特に、60歳以上の高齢者では、DIIスコアはMetSおよびその関連マーカーであるTG、血圧、空腹時グルコースと関連することが示されました。

以上より、米国の中高年者において、食事の質を示すDIIスコアとMetS、及びMetS関連マーカーとの関連が認められました。

The Relationship between the Dietary Inflammatory Index (DII) and Metabolic Syndrome (MetS) in Middle-Aged and Elderly Individuals in the United States
(Zhao Q, Tan X, Su Z, Manzi HP, Su L, Tang Z, Zhang Y:Nutrients, 12;15(8):1857, 2023. doi: 10.3390/nu15081857.)

オメガ博士

DIIは食事中の45の食品や栄養素の摂取量から求められるスコアであり、中でも、β-カロテン、食物繊維、オメガ3脂肪酸、ビタミンCやD、にんにく、しょうが、茶、ターメリック、フラボノイド等は、強い抗炎症性成分として位置づけられています。炎症を抑制し、MetSを予防・改善できるような食事にするためには、オメガ3脂肪酸をはじめとして、食物繊維や抗酸化物質を多く含む食品を選択することが重要となります。

メタボリックシンドローム(MetS): ウエスト周囲径(へその高さの腹囲)が男性85cm・女性90cm以上で、かつ血圧・血糖・脂質の3つのうち2つ以上が基準値から外れた状態(日本における診断基準)。

**慢性炎症: 弱いながらも長期間だらだらと持続する炎症反応のこと。慢性炎症状態が持続すると組織の機能や構造に異常が生じ、そのため、さまざまな疾患を引き起こす要因となる。オメガ3脂肪酸から産生される物質(脂質メディエーター)には、炎症を収束させ慢性炎症を防ぐ作用がある。

参考文献
1)Shivappa N et al. Public Health Nutr., 17: 1689-96, 2014. doi: 10.1017/S1368980013002115.

2024年10月25日
(川端 輝江:女子栄養大学)

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