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HOME市民の皆さまへ魚食と乳幼児の神経発達その2

オメガ博士による最新論文紹介

妊婦さんの魚食・オメガ3脂肪酸摂取と乳幼児の神経発達 その2

オメガ博士

オメガ3脂肪酸は神経や脳の重要な構成成分であり、特に胎児形成の時には多く必要とされております。以前、日本人を対象とした大規模な追跡調査で、妊娠期に魚を多く摂っていた方が、その後産まれてきた乳幼児(6ヶ月および1歳)の神経発達とに良い関連があることを紹介しました。今回は、その後3歳でも同様の解析を行ったので紹介したいと思います。

解析は、およそ9万人の妊娠さんの魚食の量で5つのグループに分け、一番少ないグループと比較してほかのグループの「神経発達の遅れ」のリスクとの関連を検討しました。お子さんの神経発達の指標は、3歳児の質問票の回答から「コミュニケーション」「粗大運動」「微細運動」「問題解決」「個人・社会」といった5つの領域を調査しました。その結果、妊娠中の魚の摂取量は、(「粗大運動」以外の)「コミュニケーション」「微細運動」「問題解決」「個人・社会」の4つの領域で良い関連が認められました(図は「問題解決」との関連)。

妊娠期の魚食と3歳児の神経発達(問題解決)の遅れとの関連

Maternal dietary intake of fish and child neurodevelopment at 3 years: a nationwide birth cohort-The Japan Environment and Children's Study.
(Inoue M, Matsumura K, Hamazaki K, et al., Front Public Health. 11:1267088, 2024.)

オメガ博士

前回の6ヶ月および1歳時と同様、今回の3歳児でも神経発達領域に対して良い方向に関連していました。魚に多く含まれるω3系多価不飽和脂肪酸は胎児の脳や神経を形成するための必須の栄養素なので、妊娠中にしっかり摂っていれば、発達遅滞のリスクが低減されることが推測できます。興味深いのは、1歳の時には、「微細運動」「問題解決」だけでの関連が、3歳では「コミュニケーション」や「個人・社会」でも認められるようになり、また、その関連が更に強くなっているというところです。はっきした理由はわかりませんが、DOHaD(ドーハッド)仮説が関与しているのかもしれません。胎児期や生後早期における様々な環境により遺伝子が化学修飾を受け、将来の疾病リスクに影響するというものです。そうだとするなら、今後もさらに他の疾患も含め、長期に追跡していかなければなりません。

2024年6月24日
(浜崎 景:群馬大学)

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