オメガ3-食と健康に関する委員会

毎日のオメガ3脂肪酸で身体能力の維持を

オメガ博士

現代の高齢化社会では、寝たきりや歩行困難といった自立生活が難しい要介護者の増加が社会問題となっています。 その原因として、運動不足や加齢に伴った骨格筋の萎縮(廃用性筋委縮)が考えられ、その進行状況により、筋肉量が減少し、全身の筋力低下が起こるサルコペニア、運動機能が衰え、日常生活の支障や要介護、寝たきり状態のリスクが高くなっているロコモティブシンドローム、そして、心身活力(運動機能や認知機能など)の機能障害、要介護状態に至る前段階とされているフレイルへと進展してくと考えられています。 若齢者も決して他人事ではなく、巣ごもり生活、外出自粛で運動量が減っていませんか?筋肉量の減少を予防、改善させるには、良質なタンパク質をとって運動することが一番なのですが、それに加えてオメガ3を摂るとより有効な働きが期待されます。

オメガ3脂肪酸摂取は、健康な若齢女性の2週間の片脚固定による骨格筋廃用性萎縮を
軽減します

オメガ3脂肪酸の補給が人間の筋肉の廃用性萎縮を軽減するかどうかは不明でした。 そこで、20人の若齢女性(BMI = 23.0±2.3、年齢= 22±3歳)に2週間の片側肢ギプスによる筋肉固定後と、ギプス解除して通常の活動に戻った2週間の筋肉サイズ、質量、および筋原線維タンパク質の合成速度に対するオメガ3脂肪酸補給の影響を検討しました。 実験ではギプス固定化の4週間前から、1日当たり5 gのオメガ3脂肪酸(魚油)を、また対照グループとしては、オメガ3脂肪酸を含まないひまわり油を摂取しました。

片側肢固定化後の筋肉の減少量は、オメガ3脂肪酸グループよりも対照グループで大きいものでした。 また、ギプス解除の2週間後では、オメガ3脂肪酸グループの筋肉量は、固定化前とほとんど変わらないほど回復していたのに対して、対照グループは有意に低いままでした。 さらに、筋原線維タンパク質の合成速度は、回復期間中、常にオメガ3脂肪酸グループは、対照グループよりも高いものでした。 このことは、オメガ3脂肪酸の補給が、筋肉タンパク質合成と筋肉サイズを強化して、骨格筋の廃用性萎縮を軽減したと考えられます。

Omega-3 fatty acid supplementation attenuates skeletal muscle disuse atrophy during two weeks of unilateral leg immobilization in healthy young women.
(Mcglory C, Gorissen SHM, Kamal M, Bahniwal R, Hector AJ, Baker SK, Chabowski A, Phillips SM: FASEB J, 33: 4586-4597, 2019.)

オメガ博士

オメガ3脂肪酸は、細胞膜の柔軟性が改善し、血流の改善や血圧が安定化することで酸素運搬力が向上し、より楽に運動することができるようになります。 また、炎症を抑制することから、筋肉痛や疲労が緩和され、可動域(腕や足など体を動かせる範囲)が大きくなるので、激しい運動を伴うアスリートの中でも注目されています。

まずはオメガ3脂肪酸の摂取で身体の環境を整え、効率の良い運動をして、体力の衰えを予防しましょう!

2021年2月26日
(守口 徹:麻布大学)