日本脂質栄養学会

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HOME市民の皆さまへオメガ3と毛皮

オメガ博士による最新論文紹介

オメガ3で毛皮がリッチに?

因幡の白兎(シロウサギ)という神話をご存じですか?シロウサギがサメを騙して海を渡ろうとして失敗。怒ったサメに身ぐるみ(毛皮)はがされてしまい泣いていたところに、出雲の国の大黒様という神様が通りかかって助け、ウサギは治療して元通り元気になったというお話です。

因幡の白兎

因幡の白兎に登場する白いウサギがサメを騙して海を渡ろうとしている様子

神話でははがされた後の毛皮がどうなったのかはわかりませんが、現代の毛皮産業において、ウサギの毛皮は貴重な材料です。毛皮の季節はもう少し先になるものの、そろそろ秋・冬のコートを考えようかという方もいらっしゃると思います。毛皮製品の製造の際に求められる品質は、防水性、毛の太さや細さ、伸縮性に対する強度が挙げられます。また、肌に密着する部分の肌触りの良さも重要です。

今回は、オメガ3酸豊富な亜麻仁油の補給は、ウサギの毛皮に有益な効果を示しているのかについての報告を紹介します。

環境条件と亜麻仁油を添加した栄養補助食品がウサギの毛皮の品質に与える影響

この研究は、環境条件と亜麻仁油を添加した栄養補助食品をウサギに与えることでウサギの毛皮の品質にどのような影響があるのかを示す目的で行われました。

研究は、実験室と屋外でそれぞれ夏と冬に行われました。ウサギにエチル亜麻仁油を添加した飼料を2ヶ月間与え、研究前、給餌2か月後、および給餌終了から2か月後の3回、毛皮サンプルをとりました。収集した毛皮の熱伝達指数や、毛の直径(μm)などの生物学的特性、破断力(N)、破断応力(kg/cm)などの物理機械的特性や伸度(%)を行い、さらに、毛や皮脂中の脂肪酸組成、組織学的構造の観察と評価を行いました。

その結果、屋外で飼育されたウサギの毛皮は、熱保護効果が大きくなりました。亜麻仁油の投与により、毛および皮脂中のオメガ3脂肪酸が増加し、およびオメガ6に対するオメガ3の比率も増加し、毛は細く、キューティクルの状態が安定し、より柔軟性や耐水性が増加することがわかりました。以上の結果から、環境条件と亜麻仁油の摂取は、ウサギの毛皮の品質にプラスの影響を与えることを示しています。

The Effect of the Season, the Maintenance System and the Addition of Polyunsaturated Fatty Acids on Selected Biological and Physicochemical Features of Rabbit Fur.
(Roman K, et al. Animals (Basel). 2022.Apr 8;12(8):971.)

オメガ博士

高級毛皮にはウサギの他にキツネやミンクなども挙げられますが、その品質には、ひょっとすると、彼らの食生活の中のオメガ3が影響しているのかもしれません。

2023年10月2日
(籠橋有紀子:島根県立大学)

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