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オメガ博士による最新論文紹介

妊娠女性のオメガ6脂肪酸摂取量と子どもの出生時体格

オメガ博士

オメガ6脂肪酸は、リノール酸、γ‐リノレン酸、アラキドン酸などの脂肪酸を言います。オメガ6脂肪酸の代表格であるリノール酸は、体内で細胞の膜成分であるアラキドン酸に変換され、さらに、必要に応じて炎症を引き起こす生理活性物質に変化します。炎症はからだの防御にはたらき、人が生きていくうえでは重要な生体反応です。しかし、炎症反応が長引いて起こる慢性炎症は、生活習慣病のリスクになるとされています。それに対して、オメガ3脂肪酸から生じる生理活性物質は、炎症反応に対してはあまり強くない、あるいはむしろ炎症を収束して組織を正常な状態に戻す作用があります。慢性炎症を起こさないためにも、オメガ3脂肪酸を積極的に摂取することが望ましいとされています。

このコラムでは、妊娠中に母親がオメガ3脂肪酸を摂取すると、生まれてくる赤ちゃんに大きなメリットがあることについて、これまで多く取り上げてきています。今回は、オメガ3脂肪酸を積極的に摂取していても、同時にオメガ6脂肪酸を多く摂取するとどうなるのか、それに関連した論文をご紹介いたします。

母親のオメガ6脂肪酸摂取量と乳児の出生アウトカムとの関係
~韓国の母親と児の環境健康調査(MOCEH)より~

母親のオメガ3脂肪酸摂取量と、その子どもの出生時体重は関係することが様々な研究で示されています。しかし、母親のオメガ6(リノール酸)脂肪酸摂取量と出生時体重等の子どもの体格との関係を検討した研究は、多くありません。この研究では、「韓国の母親と児の環境健康調査(MOCEH)」に参加した妊娠女性の、脂肪酸摂取量と児の出生時の体格との関係を調べました。

母親の食事摂取量は、妊娠中期に調査が行われました。母親の脂肪酸摂取量と子どもの出生時体格との関係は、総オメガ6脂肪酸摂取量と出生体重および身長との間に負の関係がありました。また、リノール酸摂取量と出生体重との間には、有意差は見られなかったものの負の傾向が見られました。オメガ3脂肪酸摂取量と、出生体重および身長との関係は見られませんでした。

Association of maternal omega-6 fatty acid intake with infant birth outcomes: Korean Mothers and Children's Environmental Health (MOCEH)
(Lee E, Kim H, Kim H, Ha E H, Chang N., Nutr J, 17(1):47 , 2018)

日本は世界の中でも魚介類の摂取量が多い地域ですが、2000年以降から摂取量が減少してきています。水産庁の水産白書によると、韓国やノルウェーに魚介類の消費量が抜かれ、現在、魚介類の消費量1位は韓国です(図)。魚介類には、オメガ3脂肪酸の一つであるEPAやDHAが含まれ、妊娠期における胎児の発育に重要な脂肪酸です。

世界の1人1年当たり食用魚介類消費量の推移

今回紹介した論文の対象者は、魚介類を多く摂取している韓国の妊娠女性です。総オメガ3脂肪酸摂取量は1,470mgであり、他国の妊娠女性に比べて多い結果でした。妊娠中にオメガ3脂肪酸を多く摂取していても、オメガ6脂肪酸摂取量が多くなると、子どもの出生体重が小さくなる可能性があることが分かりました。そのため、妊娠中は、過剰なオメガ6脂肪酸摂取は控えることが大切です。

2023年8月4日
(松本梓:女子栄養大学)

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