日本脂質栄養学会

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オメガ博士による最新論文紹介

若い皆さんへ、もっと積極的に魚を食べてください!

オメガ博士

日本人は、欧米の人々に比べて魚を食べています。このため、欧米の人々に比べて一般的に日本人はn-3系脂肪酸、いわゆるドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)を食事から摂取する機会が多くなっています。しかし、DHAやEPAの摂取量が多い集団において、DHAやEPAの摂取量と心血管疾患(CVD)リスクとの間に逆相関が存在するかどうかはほとんど知られていません。

つまり、ほどほどに魚は食べていると思っており、魚料理が身近な日本人にとって、これ以上積極的に魚を食べることを意識する必要があるのか?ないのか?気になるところです。統計資料をみれば一目瞭然ですが、特に若い世代を中心に魚の消費量が減っています。そして今後も魚の消費量が増えることは余り楽観的には思えません。

そこで、今回は、欧米の人々に比べて魚料理が身近にある我々日本人も健康のためには改めてもっと意識して魚を食べた方が良いのか?という疑問を検証してみましょう。

長鎖n-3系多価不飽和脂肪酸摂取量と日本人における心血管疾患死亡リスク
NIPPON DTAT80の24年間追跡調査より

食事性長鎖n-3系多価不飽和脂肪酸の主な起源は魚介類です。欧米諸国における多くの研究で、魚や長鎖n-3系多価不飽和脂肪酸の摂取とCVDとの関連が示されています。一方、日本人の平均的な魚の摂取量、つまり長鎖n-3系多価不飽和脂肪酸の摂取量は、欧米人に比べて著しく高くなっています。欧米人と比較して日本人は、魚の摂取量では約3~4倍、長鎖n-3系多価不飽和脂肪酸の摂取量では6~10倍高くなっています。

一方、食事からのナトリウムの摂取とは独立した形での長鎖n-3系多価不飽和脂肪酸の摂取が、長期的なCVDリスクと関連するかどうかについては、ほとんどデータが得られていません。

そこでNIPPON DTAT80において全国300地域からベースライン時にCVDを発症していない母集団から無作為に抽出した9190人(女性56.2%、平均年齢50.0歳)を追跡調査しました。食事からの長鎖n-3系多価不飽和脂肪酸の摂取量は、家庭で秤量した食品記録を用いて推定した。Coxモデルを用いて多変量調整した ハザード比(HR)と信頼区間(CI)を算出した。

24年間の追跡期間中(192,897人年)、879例の心血管死が観察されました。長鎖n-3系多価不飽和脂肪酸の1日摂取量の中央値は0.37%kcal(0.86g/日)でした。図に示した通り、対象者全体におけるCVD死亡率の調整後HRは、長鎖n-3系多価不飽和脂肪酸の摂取量の最高四分位群では最低四分位群に比べて低く(HR 0.80; 95% CI 0.66-0.96)、その傾向は統計学的に有意でした(P=0.038)。

同様の傾向は冠動脈性心疾患死亡と脳卒中死亡でも観察されました。年齢群別の解析では、長鎖n-3系多価不飽和脂肪酸の摂取と総CVD死亡および脳卒中死亡リスクとの逆相関は、若年者(研究開始時30~59歳)で有意でした。

結論として、日本人においても長鎖n-3系PUFAの摂取量が多いほど、長期的な心血管疾患リスクが低下することが示されました。特に若年成人において、この傾向が顕著であった。

心血管疾患死亡(CVD)の調整後ハザード比

Long-chain n-3 polyunsaturated fatty acids intake and cardiovascular disease mortality risk in Japanese: a 24-year follow-up of NIPPON DATA80.
(Miyagawa N et al. Atherosclerosis. 2014; 232(2): 384-9.)

オメガ博士

日本人は、欧米の人々に比べて確かに魚を食べる機会が多いのは確かです。しかし、そんな日本人でも特に魚食離れが著しい若い世代では、さんまで1日に1/4尾しか食べない人とさんまを1日に1尾食べる人では、さんまを1日1尾食べる人の方が血管疾患を発症しにくいということが初めて示された。つまり、我々は日本人も健康を維持するためには今以上に積極的に魚を食べた方がよさそうです。

NIPPON DATA80 全国から無作為抽出された300地区を対象としており、日本国民を代表する集団のコホート研究に位置づけられています。本研究から得られ知見は、健康日本21や動脈硬化性疾患予防ガイドラインなどの策定にも活用されています。

2023年7月20日
(大久保 剛:仙台白百合女子大学)

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