オメガ博士による最新論文紹介
魚を食べると認知症予防になるのでしょうか?
日本人を対象とした大規模研究の結果は?!
魚介類には認知機能の低下を防ぐのに有効な栄養素であるオメガ3脂肪酸やビタミンDが多く含まれています。
習慣的な魚の摂取は認知症発症リスクを下げるかもしれません。ところが、魚の毎日の摂取量と、認知症発症との関連について調べた調査研究はこれまでにわずかしかなく、その結果は一貫していませんでした。そこで、日本人の高齢者1万人以上を対象とした観察研究をご紹介します。
日本人高齢者における魚の摂取量と認知症発症リスク
~大崎コホート2006スタディより~
今回の研究は、宮城県大崎市に住む65歳以上の方を対象として、食物摂取頻度調査票(FFQ)を用いて魚およびその他の食品の摂取に関するデータを収集しました。また更に、5.7年間の追跡調査を行いました。13,102人の参加者の認知症の発症率は8.5%(1,118名)でした。1日あたりの魚の摂取量が最も少ない被験者の集団(Q1)の認知症リスクを1とした場合に、魚の摂取量が多いQ2で0.90、Q3で0.85、Q4で0.84でした(p=0.029)。つまり、日本人高齢者で魚を多く摂取している人は、少ない人に比べて、認知症になるリスクが16%低いことが示されました。この関連は、追跡調査の最初の2年間に認知症と診断された参加者や、追跡調査開始時点に認知機能が低かった参加者を除外しても観察されました。結論として、認知機能に障害のない健康な高齢者において、魚の摂取量が多いと認知症発症リスクが低いという関連が認められました。
Fish consumption and risk of incident dementia in elderly Japanese: the Ohsaki cohort 2006 study.
(Tsurumaki N, Zhang S, Tomata Y, Abe S, Sugawara Y, Matsuyama S, Tsuji I: British Journal of Nutrition, 122, 1182-1191, 2019.)
今回の知見は、習慣的な魚の摂取が認知症予防に有益である可能性を示唆しています。我が国の高齢者の認知症の発症率は、80-84歳では24.4%ですが、85歳以上になると55.5%に急増します1)。認知症対策は、なるべく早期から行なっていく必要がありますが、予防であるため薬剤によってなされるのではなく、この様な食品の選択によるのが理想的だと思います。その中の候補が、魚に含まれているオメガ3脂肪酸やビタミンDではないかと思います。皆さんも1日1回は魚を食べることをお勧め致します。
参考文献
1) 「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」
(平成26年度厚生労働科学研究費補助金特別研究事業)より算出
2023年7月12日
(押田恭一:順天堂大学小児科)