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オメガ3-食と健康に関する委員会

ストレスによる不安の高まりをオメガ3脂肪酸は抑える

オメガ博士

新型コロナウィルスの感染拡大は、私たちに不要不急の外出自粛、巣ごもり生活など、これまで経験したことの無い新しい生活をもたらしました。 この不便な時間が長引いてくると、「食」に対しても、少しずつ変化が生じてきます。 外食から、お取り寄せ、宅配や冷凍食品などもそろそろ飽きて、ご自分で調理する機会が増えてきたと思います。 そこで、考えなくてはいけないのが、脂質摂取のバランスです。 動物実験レベルですが、今の私たちに当てはまる現象を紹介します。

食事性オメガ3脂肪酸欠乏マウスは、慢性的な軽度のストレスによって生じる不安を増強する

この研究では、2世代にわたってオメガ3脂肪酸が欠乏した飼料もしくはオメガ3脂肪酸(αリノレン酸含有飼料)を含む正常飼料で飼育した両マウスを用いて、緩やかなストレスを生じる「個別飼育」とストレスがほとんどない「グループ飼育」に分け、孤立生活によって誘発される「不安」がどうなるか調べたものです。

個別もしくはグループで3週間飼育したマウスの不安レベルを、新奇環境摂食抑制試験という試験で評価しました。 この試験は、一晩、絶食したマウスを50 cm四方の空間中に入れ、中央に置いたエサを食べに行くまでの行動を観察するものです。 マウスは、壁伝いに移動する習性があるので、不安レベルの高いマウスは、中央のエサを食べに行くことがなかなかできません。 試験の最初の5分間で、正常飼料でグループ飼育した92%のマウスは、エサを食することができました。 また、正常飼料で個別飼育した場合は、50%のマウスが、オメガ3脂肪酸が欠乏した飼料でグループ飼育した場合は33%、個別飼育だと30%のマウスしかエサを食することができませんでした。 観察時間を10分まで延長すると、正常飼料で個別飼育したマウスは79%、オメガ3脂肪酸が欠乏した飼料でグループ飼育したマウスは67%まで、その場の環境に慣れてエサを食する割合が増えましたが、オメガ3脂肪酸が欠乏した飼料で個別飼育したマウスは30%のままで、エサを食べる個体は増えませんでした。

このことは、オメガ3脂肪酸が欠乏しているマウスは、通常の状態でも不安レベルが高く、個別飼育のような緩やかなストレスを与えると、不安レベルがさらに増強していたことを意味しています。

時間内にエサを摂取できた個体数

Dietary n-3 fatty acid deficiency in mice enhances anxiety induced by chronic mild stress Lipids
(Harauma H, Moriguchi T,.46:409-16.,2011.)

オメガ博士

喜怒哀楽と言ったような感情の中心は、脳の働きが関わっています。 「不安行動」も状況を認識して、脳が反応した結果です。 「脳」は水分を除くと65%が脂質で、他の臓器に比べて脂質の割合が多く、とても柔らかい臓器なのです。 オメガ3脂肪酸摂取量が不足して、脳の脂質バランスが乱れると、脳本来の機能を充分に発揮できない状態になってしまいます。

昨今のコロナ禍では、生活スタイルが変わり、普段以上にストレスが溜まり、気が滅入る人も増えているようです。 その変化になかなか対応できていない毎日ですが、脳内の環境は健全な状態が保てるように、いつも食生活のなかでオメガ3脂肪酸を満たす必要があります。

2021年2月26日
(守口 徹:麻布大学)