オメガ3-食と健康に関する委員会

血中オメガ6/オメガ3比と死亡リスクとの関連(イギリスのコホート研究より)

オメガ博士

がんと心血管疾患は、非伝染性疾患における主要な死亡原因です。これまでにオメガ3やオメガ6の摂取量や血中濃度とこれらの死亡との関連については多く報告されております。ほとんどの大規模観察研究では、オメガ3ではある程度の保護的作用が報告されていますが、オメガ6に関してはまだ一致した見解は得られていません。そこで、今回はイギリスで血中脂肪酸を利用した大規模な前向きコホート研究の結果を紹介しようと思います。

血漿中のオメガ6/オメガ3脂肪酸の比率が高いほど、全死因死亡、がん死亡、心血管死亡のリスクが高い:UK Biobankにおける集団ベースのコホート研究

イギリス人117,546人(40〜69歳)を平均8.9年追跡し、その間4,733名が死亡し、そのうちがんによる死亡が2,585名、心血管疾患による死亡が1,017名でした。血中オメガ3およびオメガ6、そしてその比率と、上記死亡との関連を調べたところ、オメガ6 /オメガ3 比が増加するにつれ、全死因死亡が増加するという結果でした。さらに、血中オメガ3およびオメガ6では、増加するほど全死因死亡が減る結果となり、オメガ6よりもオメガ3の方でその関連が強いという結果でした。なお、がんによる死亡や心血管疾患による死亡でもほぼ同様の結果でありました。

血中脂肪酸と全死因死亡との関連

Higher ratio of plasma omega-6/omega-3 fatty acids is associated with greater risk of all-cause, cancer, and cardiovascular mortality: a population-based cohort study in UK Biobank.
(Zhang Y et al., medRxiv. 2023 Jan 18;2023.01.16.23284631.)

オメガ博士

この論文の中では、オメガ3のみならずオメガ6 でも全死因死亡、がん死亡、心血管疾患死亡のリスク下げる方向に動いておりましたが、何故、オメガ6 /オメガ3比がリスク上昇と関連していたかについては言及されていませんでした。一般的には、オメガ3には抗炎症作用があり、オメガ6は炎症の材料となり得ることを考えると、やはり炎症が絡んでいることが予想されます。血中オメガ3およびオメガ6の測定は、食事調査による摂取量算出よりも正確で客観的ではありますが、血中脂肪酸の測定による観察研究はまだ少ないのが現状です。ちなみに、日本人のオメガ6 /オメガ3比、オメガ3、オメガ6の平均は2.7、11.5%、29%なのに対して1)、本研究(イギリス)では中間値が9.0、4.2%、39%と、かなりの開きがあります。もし同規模の研究を日本で行った場合、どのような結果になるのか知りたいところです。

参考文献
1) Hamazaki K et al., Sci Rep. 2021 Feb 17;11(1):4003. doi: 10.1038/s41598-021-83478-5.

2023年5月15日
(浜崎 景:群馬大学)