オメガ3-食と健康に関する委員会

高齢者はイワシ缶詰の摂取で糖尿病の発症を防ぐことができる?

オメガ博士

令和2年度10月に実施された患者調査によると、糖尿病患者は、入院で15.2千人、外来患者では215.0千人にものぼります1)。近年の国民健康栄養調査では、糖尿病の指摘の有無に関する問いでは、年齢が重ねるにつれ増加することが調査結果からわかりました2)

糖尿病は、遺伝が原因で罹患する1型糖尿病と、生活習慣が原因として発症する2型糖尿病があります。我が国の糖尿病患者の大多数は2型糖尿病患者と言われています。

今回は、高齢者の糖尿病予備群を対象にイワシ摂取の評価が行われた報告がありましたので紹介します。

イワシの缶詰を摂取することで、糖尿病の発症を予防することができる

本研究は、65歳以上の高齢者でかつ糖尿病予備群の健常者を対象とした介入研究です。対象者をコントロール群と、オメガ3が豊富に含まれているイワシ摂取群の2群に分け比較検討しました。また、介入期間中に各群の対象者に対し、4カ月ごとの栄養教育も実施しました。コントロール群、イワシ摂取群ともに、糖尿病予防目的のために野菜や豆類、全粒粉、魚介類、赤身肉を摂取することが推奨され、加工肉や超加工食品を摂取することは避ける指導がなされていました(通常の食事)。イワシ摂取群では、通常の食事に加えイワシのオリーブオイル漬けの缶詰を12か月(1年間)継続して摂取しました(1週間に200g)。

その結果、介入前後で比較したところ、両群ともに体重、BMI、ウエスト周囲径、ヒップ周囲径、ウエスト/ヒップ比、体脂肪率、体幹脂肪率、腹部脂肪率はいずれも有意な低下が認められました。顕著な特徴としては、イワシ摂取群は、収縮期血圧、拡張期血圧で有意な減少が認められました。血液生化学検査では、HbA1c、血糖値、中性脂肪(TG)が有意な低値、HDLコレステロールの有意な高値が認められ、インスリン抵抗指数であるHOMA-IRは、コントロール群は介入前後で変化は認められませんでしたが、イワシ摂取群では有意な低値が認められ、アディポネクチンでは有意な高値が認められ、インスリン抵抗性が改善し糖尿病の発症のリスクが低下することが示唆されました。さらに、赤血球膜の脂肪酸組成を調べたところ、イワシ摂取群はオメガ6脂肪酸の有意な低値が認められ、オメガ3であるEPA、DHAは有意な高値が認められ、オメガ3指数も有意な高値が認められました。以上のことから、糖尿病の発症予防には通常の食事に加えてイワシの缶詰を摂取することで、糖尿病発症の予防に繋がることが明らかとなりました。

群ごとのインスリン抵抗指数(介入前後での比較)

Type 2 diabetes preventive effects with a 12-months sardine-enriched diet in elderly population with prediabetes: An interventional, randomized and controlled trial.
(Díaz-Rizzolo DA, Serra A, Colungo C, Sala-Vila A, Sisó-Almirall A, Gomis R.:Clini Nutr.40(5): 2587-2598、2021)

オメガ博士

いかがでしょうか。糖尿病は加齢とともに発症しやすくなります。イワシ摂取群で認められた効果は、イワシに含まれるオメガ3に起因しているとものと考えられます。イワシ料理が苦手でも、缶詰を使用することで手軽に魚を摂取することができますね。また、食事から摂取し効果を得るためには、長期間継続的に摂取することが必要であることも明らかとなりました。日々の健康、糖尿病発症予防のために魚を食べてみませんか?

参考文献
1) 厚生労働省 令和2年患者調査結果の概要
2) 厚生労働省 令和元年国民健康栄養調査報告

2022年11月30日
(保科由智恵、西川正純:宮城大学)