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オメガ博士による最新論文紹介

オメガ3と虚血再灌流障害

オメガ博士

令和3年度の我が国の死因は、1位悪性新生物、2位心疾患、3位老衰、4位脳血管疾患です1)

心疾患には、心不全や虚血性心疾患、不整脈など循環器疾患は多岐にわたります。心房細動や心臓粘液種などの塞栓の発症や血液凝固能の亢進や動脈硬化などにより血栓の発症が原因となり発症します。血流の虚血・梗塞では、直ちに血流を再開させ、機能を回復させるために、血流の再開を目的とした治療が行われています。その際、虚血により、障害を受けた心臓は、リモデリングによる心筋細胞の伸展、心室の拡大による心筋の線維化が進み、血流の再開により臓器の機能障害が発症することを虚血再灌流障害(I/R;Ischemia/reperfusion)といいます。この障害は、治療により発症することから、不可避な障害であり、軽減させる研究が広く行われています。

そこで今回は、最近の情報としてDHAを摂取することでの効果について紹介します。

虚血再灌流障害におけるDHAの摂取はリモデリングと機能不全を抑制する

本研究はマウスを用いて、リノール酸とα-リノレン酸を摂取するコントロール群(CD)、それとDHA摂取群(DHA)の2群に分け比較しました。それぞれの脂肪酸の組成比は、コントロール群のリノール酸(g/kg)3.00、αリノレン酸(g/kg)0.7、DHA(g/kg)0.0、DHA摂取群がそれぞれ、2.9、0.43、0.26でした。

虚血を生じる心筋梗塞の手術を行う7日前から試験食を摂取させ、術後に評価をしました。すると、炎症性サイトカイン*の発現量を測定したところ、TNF-αでは、再灌流6時間後と72時間の発現量がコントロール群に比べ有意に減少し、IL-1β、IL-10はともに72時間後の発現量がコントロール群に比べて有意に減少してしました。また、心臓が送り出す血液量(=駆出率)を測定したところ、DHA摂取群の方が有意に高い割合でした。さらに、酸化ストレスの生成抑制など今回の介入試験を通して、虚血再灌流のリモデリングと機能不全の抑制には、DHAが有効であることが明らかとなりました。

炎症性サイトカインの経時的変化による発現量の比較

DHA Supplementation Attenuates MI-Induced LV Matrix Remodeling and Dysfunction in Mice.
(Habicht I, Mohsen G, Eichhorn L, Frede S, Weisheit C, Hilbert T, Treede H, Güresir E, Dewald O, Duerr GD, Velten M.:Oxid Med Cell Longev. 2020:1-14、2020)

オメガ博士

虚血再灌流障害は、死因第2位の心疾患の治療で起こり得る障害です。しかし、虚血発症前からDHAを摂取することが有効である報告です。日ごろからのオメガ3脂肪酸を摂取することが望まれますね。

*炎症性サイトカイン:

TNF-α…腫瘍懐死因子(マクロファージより産生され、炎症メディエーターや形質細胞による抗体産生の亢進を行うことで感染防御に関与する)

IL-1β…インターロイキン-1(活性化マクロファージから産生されたIL-1は血管内皮の活性化、リンパ球、単球および顆粒球などの免疫細胞の増殖促進効果を有している)

IL-10…インターロイキン-10(ヘルパTh2細胞から産生され、単球や活性型B細胞、皮膚の角化細胞など様々な細胞より産生され、抑制性の作用がある)

参考文献
1) 厚生労働省 令和3年(2021年)人口動態統計(確定数)

2022年11月21日
(保科由智恵、西川正純:宮城大学)

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