オメガ3-食と健康に関する委員会

妊婦さんの魚食・オメガ3脂肪酸摂取と1歳時点の睡眠時間

オメガ博士

昔から“赤ちゃんは寝るのが仕事”とよく言われていますが、睡眠が不足すると身体の発達やその後の肥満や生活習慣病に影響することが知られております。これまでのいくつかの研究で、妊娠中に魚やオメガ3摂取が睡眠にも良い影響を与える可能性が報告されてきましたが、調査対象が小規模であることがほとんどでした。そこで今回、環境省が行っている「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」から得られた約9万人の大規模データを用いて、妊婦さんの魚食およびオメガ3摂取と生まれた子どもの1歳時点での睡眠不足との関連を調べてみました。

妊娠中の母親の魚摂取量と乳児の睡眠時間との関連:全国縦断研究−子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)

アメリカ国立睡眠財団(National Sleep Foundation)が推奨している1歳児の睡眠時間は1日11〜14時間とされていますので、これよりも短い11時間未満を睡眠不足と定義しました。また、妊婦さんの魚およびオメガ3摂取量は、妊娠中に食事調査票を使って調べており、解析の際には少ない方から5等分にして並べ、摂取量が一番低い群と比べて、睡眠不足になるリスクを統計的に解析してみました。その結果、妊婦さんが魚やオメガ3を十分に摂取することで、生まれた子どもの1歳時点での睡眠不足のリスク低下と関連しているということがわかりました。

オメガ3脂肪酸欠乏の母親マウスにおける仔回収行動

Association between mothers' fish intake during pregnancy and infants' sleep duration: a nationwide longitudinal study-The Japan Environment and Children's Study (JECS)
(Sugimori N, Hamazaki K, Matsumura K, Kasamatsu H, Tsuchida A, Inadera H, Japan Environment Children’s Study Group. Eur J Nutr., 61: 679-686, 2022.)

オメガ博士

なぜ、魚食やオメガ3摂取が関連しているのかはっきりしておりませんが、そもそも睡眠を制御しているのは中枢神経と呼ばれるところです。以前、同じエコチル調査の結果から、魚食やオメガ3摂取が神経発達の一部と関連していることを報告しています(2021年4月19日「妊婦さんの魚食・オメガ3脂肪酸摂取と乳幼児の神経発達」)。妊婦さんがオメガ3をしっかり摂ることにより、睡眠に重要な中枢神経の発達が促され、睡眠不足のリスク低下に繋がった可能性が考えられます。

2022年4月15日
(浜崎 景:群馬大学)