オメガ3-食と健康に関する委員会

缶詰の活用は可能か?―魚の調理は少々面倒と思う方へ―

缶詰の利用

魚に含まれる脂質成分のうちエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)は、抗炎症反応や抗アレルギー、生活習慣病予防に役立つことが知られています。日本は海外と比較し魚食文化があるといわれていますが、その摂取量は戦後以降低下し、今は平均1日切り身1/2切れ程度です。体に良いことは分かっていても、手間や調理時間、そして価格などの面から敬遠していませんか。

ここ数年少しずつ増えているのが魚の缶詰です。調理の手間の省略や時短目的に手軽に摂れる缶詰の活用が言われています。魚の調理方法の違いにより、残存するEPAやDHAが減少することが報告1)されていますが、缶詰の場合はどうでしょうか。日本で小魚の分類になる「いわし」や「きびなご」に当たるニシン科の一種スプラットの缶詰(日本に出回っているオイルサーディンのような缶詰)を用いた研究を紹介します。

燻製スプラット缶詰のEPA・DHAの真の保持率、脂質酸化
および物性に及ぼす技術的プロセスの影響

生スプラットと冷凍保存・解凍後のスプラットを、それぞれ燻製にし、オイルを入れた油漬け缶詰を作製しました。その2種のスプラットを缶詰にする工程において、「調理加工前」「燻製後」、そして缶詰に入れて殺菌・開封後の「固形(魚)」と「液体(油と水)」に分離して比較しました。

生スプラットに対し、冷凍・解凍後のスプラットの調理加工前のEPAとDHAは少なく、捕った季節の違い、冷凍・解凍中のドリップによる低下と考えられました。

それらのスプラットを燻製にし、缶詰に詰めて殺菌処理をしますが、殺菌中にEPAやDHAは缶の液汁へ溶出することによる低下がみられました。殺菌後の魚に残った最終的なEPAとDHAの割合は、生スプラットでは76.8%、冷凍・解凍後のスプラットでは70%となりました。「燻製」によるEPAとDHA量には、大きな変化はありませんでした。

Effect of Technological Process on True Retention Rate of Eicosapentaenoic and Docosahexaenoic Acids, Lipid Oxidation and Physical Properties of Canned Smoked Sprat (Sprattus sprattus)
(Domiszewski Z, Mierzejewska S, Int J Food Sci., 5539376,2021; doi: 10.1155/2021/553976)

オメガ博士

缶詰のEPAやDHAを効率よく摂るためには、生の魚からつくった缶詰の方が多く摂取することができます。しかし、その分価格が高くなります。冷凍・解凍された魚の缶詰に70%のEPAやDHAが残っていることを考えると、生の魚をグリルやフライパンで焼いた(残存率約80%)より少し少なくなる量です1)。論文の著者らも、缶詰の魚を食べることで、価格的にも効率的にEPA・DHAを摂取できると述べています。

家庭で調理した魚を食べるのか、それとも缶詰を利用するのかについては、それほどこだわる必要はなく、食べる量や頻度を増やすことで習慣的なEPAやDHAの摂取量を増やすことができるのではないでしょうか。

参考文献
1) Cheung LKY, Tomita H, Takemori T. J Food Sci, 81:C1899-1907, 2016.

2021年2月21日
(堀口さやか:埼玉医科大学栄養部・管理栄養士)