日本脂質栄養学会

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オメガ博士による最新論文紹介

子どものおさかな摂取は、認知能力によい影響をもたらすか?

オメガ博士

学童期の子どもに対して、オメガ3脂肪酸補給にはどのような効果があるのでしょうか。健康な学童を対象とした介入試験において、EPAやDHAサプリメントを用いた研究がいくつか見られます。しかし、認知および社会情緒的機能に対して、効果があると報告されている場合と、効果がないと報告されている場合とがあり、一貫性がなく結論がまだ出ておりません。また、魚そのものを摂取することによる効果を検証した研究は限られています。そこで今回は、学童の認知及び社会情緒的機能に対する魚(油の多い魚)を摂取したときの影響について調査した研究を紹介しましょう。

8~9歳の健康な子どもたちの認知および社会情緒的機能に対する魚摂取の影響

デンマークの健康な8~9歳の子どもたち(n = 199)は、無作為に2つの群に分けられました。一方の群には、1週間当たり約300 gの脂の多い魚(魚摂取群)を、もう一方の群には鶏肉(対照群)をそれぞれ提供し、約4か月間子どもたちに摂取してもらいました。4か月の試験期間の初日と最終日に、注意力、学習反応時間、記憶、感情、行動等に関するいくつかの検査を行いました。

197人の子どもたちが介入試験を完了しました。魚摂取群では、介入前の子どもたちの魚摂取量(中央値)は1週間当たり37g でしたが、介入期間中は1週間当たり375gに増加し、EPA とDHAの合計摂取量は1日当たり135から913mg に増加しました。これにより、魚摂取群の赤血球中のEPA + DHAは4.9から7.3%に増加しました。全体的な認知能力スコアは、鶏肉を摂取した対照群と比較して、魚摂取群で改善する傾向がありました。これは主に、注意力と認知的柔軟性(状況に応じて課題を柔軟に切り替えていく能力)の試験結果の向上と、親が評価した内在化問題(恐怖、身体的な訴え、不安、社会的引きこもりなど)の改善によるものでした。また、赤血球中のEPA + DHA の割合が1%増加すると、全体的な認知能力スコアは0.07ポイント改善し、両者には用量反応関係が見られました。全体的な効果は男の子と女の子で同様でした。

Effects of oily fish intake on cognitive and socioemotional function in healthy 8-9-year-old children: the FiSK Junior randomized trial
(Teisen MN, Vuholm S, Niclasen J, Aristizabal-Henao JJ, Stark KD, Geertsen SS, Damsgaard CT, Lauritzen L: Am J Clin Nutr, 112: 74-83, 2020)

近年、日本人の魚介類の摂取量は急速に減少し、それに対して、肉類の摂取量は急増です。その結果、現在では、魚介類摂取量より肉類摂取量が大きく上回っています。図は、現在の1日当たりの魚介類と肉類の摂取量を年代別に比較したものです(2019年国民健康・栄養調査より)。高齢者と比べて、若年層では魚摂取量と肉類摂取量の差が特に顕著であることがわかります。

年齢階級別の魚介類と肉類摂取量

今回の論文では、学童期の子どもにおいても魚の摂取は有益である可能性が示されました。魚食の良さを改めて見直すことが勧められます。

2022年2月8日
(川端輝江:女子栄養大学)

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