日本脂質栄養学会

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オメガ博士による最新論文紹介

魚食を推進するには「食育」が重要

オメガ博士

魚を積極的に食べると糖尿病の危険性を低下させ、肥満を抑えられ、血糖コントロールとインスリン抵抗性の改善も期待され、生活習慣病の未病には効果的だと言われています。青魚やマグロなどに多く含まれるn-3系不飽和脂肪酸(エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA))は、中性脂肪を下げ、動脈硬化を予防すると言われています。しかし、厚生労働省の国民健康・栄養調査報告によると年々、魚の消費量が減少し、平成18年を境に肉類の消費量が魚類の消費量を上回り、その差は拡大傾向にあります。特に若い世代の「魚離れ」は顕著になってきています。

魚を食べない理由としては、「魚が嫌い」「生臭いに臭いが苦手」「食べるのが面倒」「調理方法が面倒」など色々と上げられる。では、魚離れが著しい若年層にどうしたら魚を食べてもらえるようになるか検証してみたいと思います。

Theory of Planned Behavior*(TPB) に基づいた栄養教育が、学童の魚食を増やすための行動に結びつくか有効性を検証しました。インドネシアの小学校4年生、5年生を対象に教育介入群(50名)、コントロール(非介入)群(52名)で実施しました。

今回の介入群の被験者は、インドネシア政府が行った「Love Eating Fish」プログラムを改良したものを受けました。介入期間の3か月間、魚の生け簀を世話しながら、魚の有用性に関する印刷物が提供され、6回講義を受けています。この時、両群の対象者の家庭環境や性別などのバイアスを考慮して解析をした結果、最低でも週に2回、もしくは毎日魚を食べることが健康に良いということを介入群は栄養教育によって有意に認識していました。更に、3日間の食事調査を行い、インドネシア料理に使用される魚の使用量に関するデータベースから魚の摂取量を算出したところ、介入群はコントロール群に比べて有意に魚を食べる量が増えました。

計画されたTBPに基づく3か月の栄養教育介入は、小学生の魚の消費を大幅に増加させました。消費量の増加は、被験者の魚に対する知識の増加や魚食に対する考え方に関連していると考えられます。

魚食の栄養教育

Nutrition Education Intervention Increases Fish Consumption among School Children in Indonesia: Results from Behavioral Based Randomized Control Trial.,
(Mahmudiono T, Nindya TS, Rachmah Q, Segalita C, Wiradnyani LAA.: Int J Environ Res Public Health., 17(19):6970-84., 2020)

オメガ博士

「三つ子の魂、百までも」という諺にもある通り、学童期からきちんとした魚食の栄養教育を行うことは、若年層の魚を食べる機会を増やすには非常に重要です。魚の機能性研究に関する論文は数多く報告されていますが、これらの有効性をどのように伝えるかもこれと同等かそれ以上に重要なことです。

*The theory of planned behavior(計画的行動理論)
 人がある行動をとろうとした時、その目的とする行動を行う前には、行動しようとする「意思」が働き、その行動をどのように実行するのかについては、本人の態度や主観的な行動をしようとする思いに影響を受けます。今回の場合は、魚を食べようとした場合、魚を食べたいという意思が働き、実際に食べようとする気持ちが実際に食べる行動に影響を与えることになります。

2021年6月10日
(大久保剛:仙台白百合女子大学)

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