日本脂質栄養学会

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オメガ博士による最新論文紹介

オメガ3脂肪酸は、重症化した新型コロナウイルス感染症から患者を救えるか?

オメガ博士

世界中に広がった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。2021年に入っても世界中で未だ衰える気配がなく、日本では第3波が押し寄せています。新年会はあちらこちらで取りやめとなり、皆さんも少々さびしい毎日を過ごしているのではないでしょうか。

COVID-19。この感染症が何と言っても恐ろしいのは、重症化すると急性呼吸窮迫症候群(ARDS)と呼ばれる重度の肺損傷を伴うことです。ARDSになると、血液中に酸素が取り込みにくくなり、急な息切れや呼吸困難が生じます。今日は、この恐ろしいARDSの改善に、オメガ3脂肪酸が役立つ可能性についての総説を紹介しましょう。

オメガ3脂肪酸の栄養補給は、COVID-19患者の重篤な合併症を軽減するのに役立つか?

COVID-19に見られるARDSは、サイトカインストームにより生ずると考えられています。サイトカインストームというのは、攻撃的な炎症反応と不十分な抗炎症反応により、免疫反応が制御不能になることを言い、これがひどくなると、全身性炎症と多臓器不全を引き起こします。エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)などのオメガ3長鎖多価不飽和脂肪酸は、生体内で積極的に炎症反応を収束するSPMと呼ばれる物質に変換されます。そのため、ARDSの急性肺損傷の改善と炎症反応の収束に対して、EPAやDHAから合成されたSPMが効果を持つとされています。実際、オメガ3長鎖多価不飽和脂肪酸は、ARDS患者を対象とした経腸栄養および静脈栄養のいくつかの臨床試験の治療薬としても使用されています。このように、オメガ3長鎖多価不飽和脂肪酸は、サイトカインストームの予防を介して、COVID-19患者の炎症の重症化と、それによる死亡のリスクを低下させる可能性があります。これまでの臨床研究に基づいて、オメガ3長鎖多価不飽和脂肪酸の使用を検討していくべきです。

May omega-3 fatty acid dietary supplementation help reduce severe complications in Covid-19 patients?
(Weill P, Plissonneau C, Legrand P, Rioux V, Thibault R: Biochimie, 179:275-280, 2020.)

オメガ博士

総説では、集中治療室(ICU)に入院したCOVID-19患者に、経腸栄養または静脈栄養を介したオメガ3長鎖多価不飽和脂肪酸の使用を強く推奨しています。

オメガ博士としては、このパンデミックに対して、このような推奨事項を強力に推し進めるためには、今後さらなる臨床試験が必要になると考えています。しかしながら、オメガ3脂肪酸による炎症の恒常維持については以前より明らかとされており、コロナウイルスに感染した患者の回復に寄与する可能性は十分あると考えられます。

SPM(Specialized pro-resolving mediator):強力な炎症収束作用をもつ物質群のこと。EPAからは、Eシリーズのレゾルビン等、DHAからはDシリーズのレゾルビン、さらにはプロテクチン、マレシン等のSPMが生成される。

2021年1月20日
(川端輝江:女子栄養大学)

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