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日本脂質栄養学会とは

2000年1月

成人病の主危険因子がコレステロールではなさそうだ、という考えは、1970年前後から始まっている。有名なグリーンランド先住民とデンマーク人の疫学から始まった多くの研究で、アラキドン酸やEPA由来のエイコサノイドの作用が明らかになってきたこと、「コレステロールと動物性脂肪の摂取を減らし、リノール酸を増やす」という古い栄養指針に基づいた臨床試験の結果が散々であり、むしろ死亡率を増やしてしまったこと、長期的な栄養評価の結果が増えてきたこと、などから、P/S比を上げるという従来の栄養指針の誤りが確かとなってきた。

このような背景から欧米では国際脂肪酸・脂質学会(ISSFAL)が活動を始め、わが国では日本脂質栄養学会が発足した。日本脂質栄養学会では第1回大会(1992年)からリノール酸/α-リノレン酸系のバランスの問題に取り組み、この比を下げる新しい方向を1997年に提案した。そして本年4月、ワシントンで開催されたISSFALによる国際的なワークショップでも、世界十カ国からの30名の専門家が同じ方向の、より厳しい新指針を採択した。摂取脂質のリノール酸/α-リノレン酸系の比を下げよう、という世界的な動きが始まったといえる。

ところが国の第6次改定「日本人の栄養所要量」(1999年)ではこの点について、「ほぼわが国の現状でよろしい」、としている。その理由は明らかでないが、この指針の策定に関わった委員の一人は、「なおわが国の所要量は、最終的には食糧の需給、日常の食生活での実践性などの現実的な問題を考慮した上で決められていることも知っておく必要がある」と書いている。これに対し日本脂質栄養学会は、「会員相互の交流を深めることにより脂質栄養学の進展を図り、時代に即応した脂質栄養指針を確立し、それに基づいた脂質性食品供給方法の開発を図り、もって健康の維持増進に寄与する」ことを目的としている。この差が、一般の人々に対する栄養指針の差となって表れていると理解できる。

本会は健康の維持増進を最高の目的とする会員を構成員としている点が特徴である。

奥山治美(初代会長)